ストイックという言葉の語源
「ストイック」という言葉は、僕たちの仕事ではよく使われる身近なものだ。
だけれど、その言葉の語源は知られていない事が多い。これはもともと古代の哲学の一派「ストア派」に由来するもので、「欲望のままに生きるのではなく、意識的に自制し禁欲する」という生き方、考え方を意味する。
ストア派の哲学者たちがなぜ禁欲的な生き方を標榜したかと言うと、欲望をコントロールする事こそが幸せに生きる事の本質につながると彼らが考えていたからだ。
ストア派の言う「欲望」とは何か?それは「自分次第ではないものをコントロールしようとする思考」を意味している。
ストア派は、自分次第ではないものと自分次第であるものを明確に区別し、自分次第であるもだけに限定して欲望の対象にして良い、と考えた。
それはなぜか?
「自分次第ではないものをコントロールしようとする」と、常に相対的価値観の中で生きる事になり、他者に依存した生き方にならざる負えない。常に他者に求め続ける生き方は不幸だ。
一方、「自分次第であるもの」に集中して生きる生き方は、他者との比較から解放されていて自由で、妨げられる事がない。自分自身の生き方を全うできる。それは幸せな事だ。
だからこそ自分次第ではないものと自分次第であるものを明確に区別する事が大切だ、というのがストア派の根本的な思想だ。この考え方を「渇愛を捨てる」という言葉で哲学者ブッダも同様に表現している。
宇多田ヒカルさんの「risk」という楽曲の歌詞に、「変えられないものを受け入れる力、そして受け入れられないものを変える力を頂戴よ」という一節があるが、これはもともとアメリカの神学者であるニーバーの祈りの一節が原典で、このニーバーの祈りはストア派の哲学者エピクテトスの「要録」から着想を得たものだと思う。
自分次第であるもの。僕らの仕事で言えば知る・学ぶ・考える・実践する。これこそが自分次第であるもの。
そんな風に考えてると、今日も自分次第である事だけに集中して生きよう、と思えますね。