ガソリンスタンドで有名な出光興産の創業者、出光佐三さんという人がいる。
百田尚樹さんの「海賊と呼ばれた男」のモデルになった人だ。
僕は「海賊と呼ばれた男」も好きだけれど、「出光佐三、反骨の言葉」にはメチャクチャ影響を受けていて、眠れない夜に何回読んだか分からない。
その本に出光佐三さんが学生時代に受けた授業で印象に残った言葉、というのが出てくる。それは、
「黄金の奴隷たるなかれ。士魂商才を持って経営に尽くすべし。」だ。
出光佐三さんはこの言葉を終生胸に刻んで、不合理な商慣習や政府による干渉、大企業の作るコミュニティを嫌い、私心を捨てていかに消費者が安く油を手に入れられるかを追究したと言う。
「黄金の奴隷になるな」
言葉では、簡単に言える。
でもこれが、難しい。
自営業者はサバイバルしなければいけないから、「これパクって高く売ればいけるな」とか、「単価を上げても買う人いるよな…」とか、「俺はすごいんだから高くて当然なんだわ…」みたいに目先のカネに心奪われて自己正当化してしまう。
未来への自己投資をせずに、自分で生み出したものでもない情報を高く売りつけて、目の前の安いカネと名声に酔いしれ速攻で消えていくトレーナーはたくさん見てきた。
もしかすると、最初は純粋に身体の事を極めたい、人を幸せにしたいという想いだったのかも知らない。
でもいつしか黄金の魔力に屈し、ただの手段であるはずのカネに支配され、カネを稼ぐためだけに何かを知っているフリをして、何かができるフリをしてしまう。
僕は金を稼ぐな、と言いたい訳ではない。
支配されるな、と言いたいだけだ。
カネは自己成長の副産物で、それ自体は主産物ではない。人生の主産物は、あくまで自己成長だ。
そもそもカネは交換を媒介する手段に過ぎないし、媒介には必ず信用が伴う。貨幣ができた時からこの事実は変わらない。
そんな風に考えると、黄金は成長と信用の積み重ねの副産物という事になる。
成長もせず、信用を得る努力もせず、ただカネを他者から奪おうとするのは根本的に間違っているんだろう。
黄金の奴隷になるのではなく、まず社会に資するに値する存在を標榜するのが大切なんだと言う、シンプルな話だ。
でも、自己投資や学ぶ事ができない人が世の中には大量に存在する。驚く程、たくさんいる。成長も信用も得ようとしないまま、歳だけを重ねていく人が実は大多数なのかも知れない。
学び続け、実践し続ける。僕達の仕事では、その道だけが明日を切り開いていく。
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