泳ぎ続けるネズミになれ
ジョンズホプキンス大学で、こんな実験が65年前に行われている。
何匹かのネズミをそれぞれ一匹ずつビーカーにたたき込み、ビーカーに水を注ぐ。
ネズミは、どれくらいの時間で諦めるのか?
恐ろしい実験だけど、結果は綺麗に出た。
15分で泳ぐのをやめて溺れるネズミか、身体の限界が来る60時間もの間、諦めずに泳ぎ続けるネズミか。その2種類どちらかしかいなかった。
次に、ネズミを捕まえては逃げさせるという鬼ごっこと、ネズミをビーカーでしばらく泳がせてからゲージに放すのを何回か繰り返す。
それから水満杯のビーカーにネズミを叩きこみ、いつ諦めるかを観察する。
そうすると、どうなるか?
全てのネズミが60時間以上泳ぎ続けたという。
これは成功体験と努力の関係を表す実験として良く紹介される。
捕まっても何回も逃げる事ができた、水が入ったビーカーから何度も脱出する事ができた、という成功体験が泳ぎ続ける力を与えた…という訳だ。
報酬系回路や手綱核-脚間核と中脳中心灰白質なんかがこの結果には主要に関わっているんだろうが、細かい内部回路の話よりも現象が大切だ。
生き延びた経験があるネズミは、その生き延び経験が例え人為的に作られたものであろうが、諦めなくなる。
成功体験を重ねると、簡単には諦めなくなる。
そうした「これで死ぬ事はない。必ず生き延びる」という認識を、人は希望と呼んだりする。
リスクを取って勉強する、起業する。自分の人生や関わる人が豊かになるために、ひたすら努力し死力を尽くす。失敗もするだろうが、少し成功する事もある。
その細い蝋燭の揺らめきのような小さな成功体験を何度も繰り返し、大きくしながら、人は挑戦の尊さや「やる後悔とやらない後悔」の明確な違い、努力する事で道が照らされて行く事なんかを学ぶ。
15分で諦めるネズミになるな。
学び続け、小さな成功体験を重ねて、「生き延びる私」を自分の力で何回も生み出し続ける事。それが行動力や前に進む力を作り出している。
それと同時に、希望は実際のところ他人が与えてくれるものではなく自分自身の体験から生み出されるものだ、という事もこの実験は教えてくれる。